はじめに
日本では急速な少子高齢化が進み、多くの産業分野で深刻な人手不足が叫ばれています。特に建設業、農業、介護分野では若い労働力の確保が課題となっており、海外からの人材受け入れが不可欠な時代になりました。このような背景の中、注目されているのが「技能実習制度」です。本記事では、技能実習制度の仕組みと課題、当社の取り組み、そして今後の制度改革について詳しく解説していきます。

技能実習制度とは
技能実習制度とは、1993年に日本政府が本格的に開始した、外国人労働者受け入れ制度の一つです。本来の目的は、開発途上国の若者たちに日本で実際の現場経験を通じて高度な技能や知識を習得させ、帰国後にその技能を活かして母国の経済発展に寄与してもらう、という「国際貢献」が掲げられています。
対象となる職種は幅広く、建設、農業、漁業、介護、食品加工、機械・金属加工など多岐にわたります。受け入れ企業は、実習計画に基づいて技能を教え、技能実習生は段階的にスキルを高めていきます。
技能実習制度の歴史
技能実習制度は、当初は「国際貢献」の理念に基づきスタートしました。しかし、1990年代後半から2000年代にかけて、日本国内の労働力不足が深刻化する中で、制度の性格が徐々に変わっていきました。
もともとは「技術移転」のための制度だったものが、いつしか「労働力の補完」を目的とする色合いが強まり、企業側のニーズに応じて対象職種の拡大や受け入れ期間の延長などが相次ぎました。
さらに、2010年の制度改正では、より厳格な監理体制や労働条件の適正化が図られた一方で、現場レベルでは依然として理念と運用にギャップが生まれています。
現在の技能実習制度の課題
現在の技能実習制度において、最大の課題は「制度本来の目的と実態の乖離」です。本来は技能習得が目的であるはずが、現実には単なる労働力確保手段として利用されるケースが一部に存在しています。その結果、賃金の未払いや長時間労働、不適切な労働環境などの問題が報道され、社会問題にもなっています。
また、こうした環境下で技能実習生が失踪するケースも少なくありません。2022年には、年間で5,000人以上の実習生が失踪したという統計もあり、制度の信頼性にも大きな影響を与えています。
受け入れ企業や監理団体には、より高い倫理観と適切なサポート体制が求められているのが現状です。
技能実習生の国籍別人気傾向
現在、日本において技能実習生として最も多く来日しているのはベトナム人です。続いてインドネシア、フィリピン、ミャンマーといった国々が続きます。
中でも近年、特に人気が高まっているのがインドネシア人材です。理由はさまざまありますが、代表的なものは以下の通りです。
- 穏やかで協調性が高い国民性
- 宗教的背景(イスラム教)から来る規律や礼儀正しさ
- 親日的で真面目な働きぶり
- トラブルが比較的少ない
10年ほど前まではベトナムの一強状態でした。ただ、上記で述べたような借金を抱えて日本へ入国する技能実習生が失踪に繋がるケースが多発しているため、業界内での国別の需要はシフトしている状態です。また、直近では、GDPが大きく伸びている国の若者は、金銭的に日本での就労に魅力を感じなくなったことも考えられます。そのため、現地の優秀層の獲得が難しくなり、日本語力の低い実習生が増えているのかもしれません。
実際に、弊組合にご相談いただく企業様の多くは「これまで別の国籍の技能実習生を雇用していたが、人材のクオリティ低下が顕著で、インドネシアに変えたい」というニーズをお持ちです。また、「10年前に雇用した1期生は日本語力も高く優秀であったが、直近の候補者は日本語が話せなく、これでは雇用ができないので、インドネシアを検討している」というご相談もございました。
私たちがインドネシアに注力する理由
私たちは、元々(前職にて)フィリピンで事業を展開しフィリピン人材を約200名ほど雇用をしておりました。彼女たちに支えられ、事業を継続することができたため、外国人材事業においても、フィリピン人材を中心に日本への送出しをしていきたいと当初は考えておりました。しかしながら、国籍別に特徴や性格が変わるのも事実です。私たちは外国人材事業を開始するにあたって、アジアの国中を回り、自分たちの目で人材のクオリティや現地の送出し機関の管理体制を確認しました。そこで、「私たち日本人が現地で人材を管理・育成し、日本人クオリティを浸透しなければ、受入企業様も技能実習生も幸せにすることはできない」と「日本語力の高さとお仕事の真面目さの総合点でインドネシアが1番高い」と強く感じました。
これを機に、インドネシアに自社の送出し機関を設立し、今では、現地での人材育成から日本での受け入れ・支援までを一貫して行う体制を整えています。当社が育成するインドネシア人材は、単に「労働力」としてではなく、「人」として丁寧に育てています。彼らの多くは家族を支えるために来日し、高い責任感と向上心を持っています。また、日本語能力もN4レベルを目指して現地教育段階から徹底指導を行っており、来日後も職場でのコミュニケーションに困らないよう配慮しています。

技能実習制度の今後
現在、政府は技能実習制度を「育成就労制度」へと抜本的に改正する方向で動いています。育成就労制度では、「人材確保」を明確に制度の目的とし、かつ技能向上に応じた転職を可能とすることで、より実践的かつ柔軟な運用が目指されます。
転職が可能になることで、受け入れ企業は今まで以上に「人を育てる」意識が求められるようになります。一方で、実習生にとっては労働環境の改善やキャリアアップの道が開かれることになります。
また、この制度改革を見据えて、現行の技能実習制度のもとで実習生を確保しようとする企業が増え、「駆け込み需要」も発生しています。このタイミングでの受け入れは、将来の人材確保競争を見据えた賢い選択と言えるでしょう。
まとめ
技能実習制度は、日本と開発途上国双方にとって大きなメリットをもたらす素晴らしい仕組みですが、現場レベルでは改善すべき課題も多く存在します。今後、育成就労制度への移行によって制度の形は大きく変わるものの、「人を育てる」という本質的な価値は変わりません。
私たちは、インドネシアという信頼できるパートナー国と連携し、自社で一貫して人材育成からサポートまで行う体制を整えています。これからの時代、単なる「人手確保」ではなく、「人材育成」を本気で考える企業こそが生き残るでしょう。
外国人材の受け入れをお考えの企業様は、ぜひ私たちにご相談ください。確かな育成と、現場にフィットする人材で、未来を共に切り拓いていきましょう。